「いいひと消費」が会社を変える? [社会]
最近、「いいひと消費」が拡大しているそうです。
「いいひと消費」とは、廃材で作られたバッグや、環境に優しい方法で栽培された綿のTシャツ
など購入し、「モノを買うことで世の中のために役立ちたい」欲求による消費者の消費行動です。
流行の最先端をいく品揃えで知られる新宿の某デパートのバッグ売り場。
エルメス、グッチ、プラダと錚々たる高級ブランドが軒を連ね、いつも
日本人富裕層や「爆買い」に訪れた中国人の観光客でにぎわっているところです。
そんな中で、'05年からこの時期に毎年行われている催しが「グローバル・グリーン」です。
この催しは「人・自然・社会」への貢献につながる要素を備えたアイテムを集めて、
展示・販売するというもの。
無農薬栽培を徹底して作られたコットンを使用した靴下や、発展途上国での雇用促進を
図ったアクセサリーなどが売られています。
今年のテーマは『エシカル・ブランド』。
「エシカル」とは耳慣れない言葉ですが、ここ数年、流行の先端を行く人々のライフスタイルを語る上で、
避けては通れないキーワードになっています。
エシカルとは英語で「倫理的・道徳的」という意味。地球環境はもとより、
商品の生産者や地域社会のことを「倫理的」に考えてモノを買おうという消費トレンドです。
「消費」と「倫理」。一見、相矛盾するかに思えるこの二つの要素が結びついて、
新しい価値が生まれようとしている。
「いいひと消費」の代表例にフェアトレード商品があります。
これは立場の弱い途上国の生産者の自立を促すために、公正な価格で取り引きされた
原材料で作られた商品のことで、国際基準も作られています。
世界におけるその市場規模は'13年度で約7115億円。
ここ数年、年20%近いペースで急成長しています。
ちなみに「エシカル」という概念が生まれた英国では、エシカル消費の市場規模は470億ポンド
('11年度、約8・8兆円)を超えており、日本でも同市場の規模は今後ますます伸びていくと予想されています。
ここに大きなビジネスチャンスが転がっているのは間違いありません。
実は、すでに倫理的な商品で大成功した例は国内にもあります。
例えばトヨタのプリウス。これは低燃費でCO2の排出量を抑えつつ、ハイブリッド車の先駆け
として累計販売台数700万台を超えています。
また、国内最軽量ボトルで石油由来樹脂の使用量を抑えた日本コカ・コーラのミネラルウォーター
「い・ろ・は・す」は3年半で20億本を超える大ヒットになりました。
確かに震災後、「絆」を意識する「いいひと」が増えました。
居酒屋に行けば、東北の地酒が「がんばれ東北」というキャッチフレーズと
ともにおススメされていることも多いですし、風評被害にあった福島の農産物を、
あえて産地を前面に押し出して売ろうとする店もよく目にします。
いまの20代は多感な時期に東日本大震災を経験し、ボランティアで被災地に行ったことのある人も多く、
昔と比べて、環境教育も進んでいますから、自然とエシカル消費を受け入れているようです。
一方で経済的にゆとりがある60代も環境問題や貧困問題への関心が高いそうです。
内閣府の行っている「社会意識に関する世論調査」においても、「社会のために役立ちたいと思っている」
人の割合がここ30年ほどで大きく上昇しています('85年は47%、'14年度には65%)。
バブル期には海外旅行に行ったり、わかりやすい高級ブランド品を買ったりすることが、
日本人の典型的な消費欲求でした。
しかし20年に及ぶ低成長時代を経て、すっかり成熟した日本において、
消費することの意味が大きく変化したといえます。
当然ながら、このような消費者の変化に、企業も対応しなければいけません。
「倫理的でない」と見なされた企業が、非難の嵐を浴びるリスクがあるからです。
フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアが発展したことで、企業と消費者の関係性に
変化が生じました。
消費者はこれまで以上に生産過程に興味を持つようになったし、安い商品の裏側になにか
社会的問題があるとわかれば、すぐにそれを発信し、情報が拡散する。
このような社会にあって、企業活動は徹底した透明性がある「いい企業」が求められています。
社会貢献や善意までビジネスのネタにするのは、まだ後ろめたさを感じる人もいるかもしれませんが、
そのビジネスで得た利益を私利私欲を肥やす為に使うのではなく、社会に還元する為に使われることが、
明確であれば、消費するだけで世の中の為に貢献できる、「いいひと消費」は益々増えて行くと思います。
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